蕉門下
涼菟 岩田氏 1659-1717
1市中や、馬にかけ行くいかのぼり。
惜しさうに初荷の幟を指しあるくあきうど、けふは松が取れしぞ。 もぐら
粉塵を捲き上げ走るトラックの、お陰様にて放射線散る。 もぐら
3唇の墨はいつから。冬ごもり。
書き初めをせしの最後は何時ごろか、忘れて我が家、筆墨は無し。 もぐら
筆墨はおろかや万年筆無くて、鉛筆も無く、スマホぽつぽつ。 もぐら
5傾城の畠見たがる、すみれかな。
田の中にをれどなほ田に出るを得ざる、新吉原の籠の鳥かな。 もぐら
とと様もかか様もなほ壮健か。畑を見つつ傾城涙す。 もぐら
8涼しさのまことは、杉の梢なり。
杉木立ゆゑに山里涼しきを、伐るなどと言ふ人愚かなり。 もぐら
涼風の吹き来る夏の夕べなり。裏山杉のめぐみとぞ思ふ。 もぐら
9神鳴に、茄子もひとつこけにけり。
茄子ひとつもがむとしては、夕立のいなびかりにぞ腰抜かしける。 もぐら
かみなりの中一散に逃げ走り、されど茄子もぐ忘れざりけり。 もぐら
13それも応、是もをう也。老いの春。
盾突きてせむ無きこと共覚えたり。老いとふものは無駄のなきなり。 もぐら
人様のお邪魔にならぬ、を第一の心がけとて老い生くるなり。 もぐら
15橋わたる人にしづまる、蛙かな。
けろけろは止めて呉れよ、と橋叩く。されど一瞬静まるのみなり。 もぐら
けろけろの騒音公害ひどけれど、高速道路のそれよりましなり。 もぐら
19にくまれて、その顔くろし相撲とり。
憎まるるほどの相撲を取りてみろ。新弟子、けふも土俵に這ふなり。 もぐら
恐ろしき突っ張りよりも、流れにて、などとふ八百長相撲、憎しも。 もぐら
20山山や、一こぶしづつ秋の雲。
西山を越えて飛び行く雲の影。孫悟空など乗りてはをらぬが。 もぐら
秋茜、翔びゆく果ては唐土にはあらじ、と思へどなほも慕はし。 もぐら
26若竹や、竹より出て猶青し。
若竹の借金綺麗にせしか知らず、先代今は蓮の台なり。 もぐら
筍の喰ひそびれしが、すくすくと次代の竹林担ふなりけり。 もぐら
28つかむ手の裏を這ひたる蛍哉。
蛍狩りなど風流のありえざる、今どき人の浅ましさかな。 もぐら
美しき手に捕らへられ、あはれ蛍、最期の光を照らしゐるなり。 もぐら