短歌・俳句の相互作用掲示板

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涼菟 [154]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2012年02月05日(日) 09時47分08秒 ]


蕉門下
涼菟 岩田氏 1659-1717


1市中や、馬にかけ行くいかのぼり。

惜しさうに初荷の幟を指しあるくあきうど、けふは松が取れしぞ。 もぐら
粉塵を捲き上げ走るトラックの、お陰様にて放射線散る。 もぐら


3唇の墨はいつから。冬ごもり。

書き初めをせしの最後は何時ごろか、忘れて我が家、筆墨は無し。 もぐら
筆墨はおろかや万年筆無くて、鉛筆も無く、スマホぽつぽつ。 もぐら


5傾城の畠見たがる、すみれかな。

田の中にをれどなほ田に出るを得ざる、新吉原の籠の鳥かな。 もぐら
とと様もかか様もなほ壮健か。畑を見つつ傾城涙す。 もぐら


8涼しさのまことは、杉の梢なり。

杉木立ゆゑに山里涼しきを、伐るなどと言ふ人愚かなり。 もぐら
涼風の吹き来る夏の夕べなり。裏山杉のめぐみとぞ思ふ。 もぐら


9神鳴に、茄子もひとつこけにけり。

茄子ひとつもがむとしては、夕立のいなびかりにぞ腰抜かしける。 もぐら
かみなりの中一散に逃げ走り、されど茄子もぐ忘れざりけり。 もぐら


13それも応、是もをう也。老いの春。

盾突きてせむ無きこと共覚えたり。老いとふものは無駄のなきなり。 もぐら
人様のお邪魔にならぬ、を第一の心がけとて老い生くるなり。 もぐら


15橋わたる人にしづまる、蛙かな。

けろけろは止めて呉れよ、と橋叩く。されど一瞬静まるのみなり。 もぐら
けろけろの騒音公害ひどけれど、高速道路のそれよりましなり。 もぐら


19にくまれて、その顔くろし相撲とり。

憎まるるほどの相撲を取りてみろ。新弟子、けふも土俵に這ふなり。 もぐら
恐ろしき突っ張りよりも、流れにて、などとふ八百長相撲、憎しも。 もぐら



20山山や、一こぶしづつ秋の雲。

西山を越えて飛び行く雲の影。孫悟空など乗りてはをらぬが。 もぐら
秋茜、翔びゆく果ては唐土にはあらじ、と思へどなほも慕はし。 もぐら


26若竹や、竹より出て猶青し。

若竹の借金綺麗にせしか知らず、先代今は蓮の台なり。 もぐら
筍の喰ひそびれしが、すくすくと次代の竹林担ふなりけり。 もぐら


28つかむ手の裏を這ひたる蛍哉。

蛍狩りなど風流のありえざる、今どき人の浅ましさかな。 もぐら
美しき手に捕らへられ、あはれ蛍、最期の光を照らしゐるなり。 もぐら

新歳時記二月 [153]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2012年01月28日(土) 17時57分23秒 ]


新歳時記二月

梅寒し。祀る鎌倉右大臣。 青木月斗

頼朝も、三代ばかりに絶えむ、とは因果にあれど悲しみをらむ。 もぐら
いてふ枯れやうやくかたのつきしならむ、源氏三代鎌倉の夢。 もぐら


下萌や、二歩に三歩に畦木影。 高野素十

さ、と融けて若草出でける田の畦に、今年の春のかほり嬉しも。 もぐら
今年畑を耕し得るかは知らねども、放射線源三十キロなり。 もぐら


鴬の身を逆に、はつねかな。 其角

梅ほころび初音を聴かむ、と出でたれど、騒々しくてえ聴かずありけり。 もぐら
逆しまに身を振り初音を出だせども、餌はし呉れぬ人間ぞ憂し。 もぐら


紅梅や、見ぬ恋つくる玉すだれ。 芭蕉

紅梅も白梅も、また放射能ゆゑに見に来る人は少なし。 もぐら
恋ひし恋ひし、何の遺恨もなけれども、ただに春来る弥生ぞ悲しき。 もぐら


むめ一輪、一りんほどのあたたかさ。 嵐雪

古雪は一枚一枚はがれ行き、淡雪融けて春となりけり。 もぐら
やうやくに一輪咲ける梅の花、人間ひとり生きかへりけり。 もぐら


歯応への残る、水菜の茹加減。 稲畑汀子

水菜、みつば、葉を喰ふものにあらずして、茎喰ふ野菜、と悟りけるかな。 もぐら
スーパーにみつば売りゐる限りにて、我が正月の終りとぞせむ。 もぐら


しののめに、小雨降出す焼野かな。 蕪村

古村のじじばば屋敷は焼け出され、あはれ悲しき紅梅白梅。 もぐら
情け無し、と泣けども焼けにし屋敷ゆゑ、しほしほ立ち退くのほか無かりかり。 もぐら


春さむし、貧女がこぼす袋米。 暁台

ひと粒の米さへ惜しみてかじりゐる、我が子に春の来むを祈りつ。 もぐら
鼠どのの曳き来し米粒横取りし、今年これにて越さむとしたり。 もぐら


元日の酔、詫びに来る二月かな。 几董

年始ゆゑ失礼せし、と詫び回り、また酒喰らふ二月なりけり。 もぐら
また酔ひて、詫び酒ゆゑにまた酔ひて、詫びを入れつつ、またも呑むなり。 もぐら


何事もなくて、春たつあしたかな。 士朗

あるやうで無きやうである、うつし世の雑事凶事にけふも明けけり。 もぐら
きのふより春となりし、と言ふがごとく、今朝の空はし水色なりけり。 もぐら



智月 [152]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2012年01月28日(土) 17時56分22秒 ]


蕉門下
智月 河合(川井)氏 1640?-1718


2名月に、鴉は声をのまりけり。

明月、と思ひしかども、鴉かあ、と鳴かば普段の秋の朝なり。 もぐら
名月、と知れども我等凡人に、お団子以外は思ひ到らず。 もぐら


3知て知らぬ身の程かなし、秋の暮。

おのれのみ不幸、と思ふことなくて、されども悲しき秋の宵かな。 もぐら
身の程、と神や仏の定めしを、今更恨みて宵の月かな。 もぐら


5指さしてのびする、稚児の月見かな。

あの月ははんぺんならず蕪らならず、喰らふすべ無き秋の宵かな。 もぐら
稚児が癖に月見月見と言ひ立つる。お団子目当て、と推量すれど。 もぐら


7麦藁の家してやらん、雨蛙。

蕗の葉の傘さしかけて、蛙どの、濡れずに帰れ、と言ふが如しも。 もぐら
蛙どのに傘さしかけて、迷惑、と逃げられにける梅雨の入りかな。 もぐら


9稲の花、これを仏の土産哉。

新米を土産、と持てば、フクシマ、とえんがちょし給ふ人ぞ悲しき。 もぐら
新米の良きかほりにぞ、ひととせの苦労なべてを忘れたりける。 もぐら


11わざとさへ見に行く旅を、不二の山。

富士の山白し、美し、と思へども、登る、とならば地獄なるべし。 もぐら
世界遺産候補なりける富士の嶺。なゐにて壊るる前にはいれよ。 もぐら


13かがしにもあはれさまけじ、尼仲間。

尼御前もひそと化粧をし給ひて、山里、春となりにけるかな。 もぐら
はかなみて尼になりし、をなほも怨む如くに、柳は春雨に濡る。 もぐら


15山桜ちるや、小川の水車。

いにしへの水車は今に小規模の水力発電。めでたかりけり。 もぐら
かの山のさくらは旨くなけれども、鰻は特上、旨し旨しも。 もぐら


16流るるや、師走の町の煤の汁。

除染とてあちこちベクレル流しければ、溝にはセシウム溜まりゐるなり。 もぐら
何処とは知らず雪降り、シーベルト、零点一ほど増しにけるかな。 もぐら


20手枕や、月は布目の蚊屋の中。

萌葱色の蚊帳越しに見る望月の、涼しげなりける夏の宵かな。 もぐら
満月は萌葱にあらで、白銀、とやうやう知りける仲秋名月。 もぐら


23ほのぼのと住みもにほふや、春炬燵。

足嬉し手にまたうれし。あはゆきを辿り来し身に春炬燵かな。 もぐら
着ぶくれてをれども指は裸なり。なべて嬉しき春火鉢かな。 もぐら


24孫どもに引起されて、歳の暮。

孫の手を当てにしをれど、遊びより帰らず、借るはし猫の手のみなり。 もぐら
大晦日なれば人並み世間並み、大掃除せむと頬被りせり。 もぐら


26鴬に手もと休めむ、ながしもと。

我が恨み代りて言ふがごときゆゑ、けふ鶯は嬉しかりけり。 もぐら
鶯の初音を餅に入れ込めて、春の銘菓を売りに出ださむ。 もぐら


30命なほあふて、たよたよ萩の花。

あらし過ぎて残りし萩の数かぞへ、詮無きこととし思ひゐるかな。 もぐら
此処までは憂き世憂き世、と思へども、残れる道も憂き世なりけり。 もぐら


31あぢさゐはまだはなじゃもの、四十から。

うば桜なほも咲かぬに春嵐、散らむを惜しみ袖濡らしけり。 もぐら
色変へて生き来しものを、紫陽花の恨み顔して赤紫なる。 もぐら

乙州 [151]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2012年01月04日(水) 10時32分14秒 ]


蕉門下
乙州 河合(川井)氏 1657-1720

2屠所遠く、霞へだてて桜哉。

屠所よりか逃れ来たらむ、豚どののぎゅう、とも鳴かで野路奔り行く。 もぐら
丸々と肥りし豚はあはれなり。我が食ふ脂身多し、と思へば。 もぐら


5鮎さびて、石とがりたる川瀬かな。

税金の払ひ残しを思ひ出し、こころの尖る師走ごろかな。 もぐら
無駄省け、節約せよ、とは言ふなれど、既得権はし別、と言ふのみ。 もぐら


6四方の秋。めし食ふ跡の煙草哉。

飯後のたばこ厳禁、となりしかば、食堂入り口たむろしゐるなり。 もぐら
体には、勿論たばこは悪けれど、定食の塩、なほも悪かり。 もぐら


8夕闇の水仙や、月を胎むらむ。

月孕むゆゑはし知らねど、十月あまりとなりて、あとの祝言知らず。 もぐら
月幾つ孕まば人とならむか、と現身ゆゑにかなしかりけり。 もぐら


11鉢たたき。憐は顔に似ぬものか。

あはれあはれ、みやこ大路を行く法師。親や孫子もあらむ、と思ふに。 もぐら
ちんちろ、と虫すだきつつ秋如何に、来む世は如何に、と思ふなりけり。 もぐら


12すず風や、我より先に百合の花。

百合の咲くころとなりけり。我が病室、消毒薬よりたかく匂ふも。 もぐら
百合咲きし島は如何にと思ふにも、あはれ踏み来し人の道遠し。 もぐら


16其春の石ともならず、木曾の馬。

中仙道、奔りて国へ逃げ帰る。木曽殿が馬、あはれなりけり。 もぐら
木曾殿が最後の石と思へども、けふはし暑き近江路なりけり。 もぐら


21夕陽や、材木店も薄紅葉。

紅葉二三付けたる材木、店にあり。主人は、売り物ならず、と言ふも。 もぐら
枝付きし材をたき木、と人は言ふ。枝切りたるを材木と言ふ。 もぐら


22客人の心になりて、年忘れ。

年越しは旅の空に、と江戸時代、伊勢参りとふならひありけり。 もぐら
百代の過客にあれば、さきの世も来むべきの世も同じことなり。 もぐら


25海山の鳥啼立る、吹雪かな。

気象婦の言ふがごとくに雪降らず。お詫び、としても脱ぎたりはせぬが。 もぐら
吹き寄せて山里なべて埋め尽くす、雪とふものはなにゆゑ白き。 もぐら


27ややさむく、人をうかがふ鼠かな。

寒の入りなれど鼠は出でにけり。きゃつらも人肌恋ひにけるにや。 もぐら
鼠ども、寒くしあるべし。ひとしきり人住む囲炉裏のあたりを騒ぐも。 もぐら


28嗽の軒端に、にっと梅の花。

咳の音も、天才なれば歌となる。あはれさまさる椿姫かな。 もぐら
老い故にひたすら辛き寒さかな。けふはし蒲団を冠りてぞゐむ。 もぐら

洒堂 [150]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2011年12月13日(火) 08時07分56秒 ]


蕉門下
洒堂 浜田氏 ?-1732

3いろいろの名もむつかしや、春の草。

名は何、はウィキペディアとやらに任せつつ、ひたすらかなしき春の花かな。 もぐら
野の花に名などは無くてあらまほし。ただ人恋ひの心あれかし。 もぐら


7人に似て猿も手を組む、秋のかぜ。

師走なれば、猿また反省しをるなり。しつけの良きを見せつけゐたり。 もぐら
反省は見せかけのみの猿多くゐる、とふ東京永田町かな。 もぐら


11細脛のやすめ処や、夏のやま。

汗既に出つくしたるに汗をかき、かきかき三たび、頂上に着く。 もぐら
ひや汗を二度も三度もかきしかば、素人芸は打ちどめとせむ。 もぐら


13名月や、誰吹き起す森の鳩。

今夜半、月蝕なれども、森の鳩、知る由もなくただ眠るなり。 もぐら
凍てにける月に蒲団を掛くるごとく、月蝕、赤く月覆ふなり。 もぐら


18炬燵にはいかにあたるぞ、蛸の足。

蛸焼は何ゆゑ丸きか。八本の足はいづこに収まりしならむ。 もぐら
蛸どのも寒し寒しと冬の月、壷はし炬燵にあらず、と思へど。 もぐら


25鹿の影、とがって寒き月夜哉。

満月と思ひし空に三日月の。さなり今宵は月蝕なりけり。 もぐら
新しき角振りたてて、牡鹿どもきさらぎみかづききほふが如しも。 もぐら


26ほととぎす鳴出す昼や、雨ひかり。
一声を聴かまほしくて越え来しをあはれむとてか、鳴くほととぎす。 もぐら
やま里は暑さ寒さも不時なれば、鳴き損ねけるほととぎすかな。 もぐら


28名月の海より冷る田蓑かな。

月満ちて汐また満ちて沖つ島、ただ秋風に冷え渡りけり。 もぐら
海ばたの田に吹きすさぶ台風は、今年の稔りをもぎ取る如し。 もぐら


31袖口に風拾ひ込む、あつさかな。

既に裸一貫をもて渡る身に、更に暑さも涼しさも無し。 もぐら
裸一貫我がふるさとを捨てしより、幾十年経ちまた裸なり。 もぐら

新歳時記一月 [149]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2011年12月04日(日) 11時45分18秒 ]


新歳時記一月

先生も人のすすめや、厄おとし。 召波

人勧めしゆゑに飲みしサプリとやら。有毒なり、とて今更遅し。 もぐら
誰がゆゑに厄積みにしか知らぬ顔しつつ、信心を勧め居るなり。 もぐら


千両か万両か、百両かも知れず。 星野立子

やうやうと十両までは上りしが、その先、親方株を買はむか。 もぐら
千両のあはれ枯れたる古庭は、万両のみが頼りなりけり。 もぐら


みちのくの雪深ければ、雪女郎。 山口青邨

雪分けてはやぶさ疾駆と思へども、温暖化ゆゑ少雪、と言ふ。 もぐら
雪女、豪雪の下埋みたり、と。みちのく情け容赦無き冬。 もぐら


箱根こす人もあるらし、今朝の雪。 芭蕉

箱根山、越ゆれば鬼の棲む邦、と思ひし昔、懐かしきかな。 もぐら
せうもなき憂き世の定め、と箱根越え、鬼らに憂き身を任せけるかな。 もぐら


転任のまた一と苦労。寒に入る。 宇土光蛾

公務員宿舎とふものなくなりて、寒さ一入、役人転勤。 もぐら
この冬は、新任地でのお雑煮となるらむ。如何なるおせちあらむか。 もぐら


初夢に故郷を見て、涙かな。 一茶

故郷にゐし鬼どもも笑ふらむ、けふはめでたき正月元日。 もぐら
夢の中のふるさとなれば、今如何になどとふことは言ひてかひなし。 もぐら


お使ひの口上上手。お年玉。 星野立子

母親の差し金なり、と思へども、利発さうなる孫には蜜柑。 もぐら
新年の口上、上手に述ぶるやう特訓すれども、おめでとう、のみ。 もぐら


年寄れど、娘は娘、父の春。 星野立子

父親は何時になりても恐ければ、重ねし年は恨みかも知れず。 もぐら
父は老い娘もやがて老い行きて、み仏定めしごとくとなるらむ。 もぐら


鐘ひとつ売れぬ日はなし、江戸の春。 其角

アメリカに梵鐘売れ、と言はれたる、TPPの東京の春。 もぐら
耶蘇が鐘もて倖せになりしかど、梵鐘をもてあの世へ行くなり。 もぐら

曲翠 [148]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2011年12月04日(日) 11時43分15秒 ]


蕉門下
曲翠 菅沼氏 ?-1717

1おもふ事、だまって居るか蟇。

けろ、とさへ鳴かぬ蛙の欝屈を、我引きずりて宿へ戻れり。 もぐら
ひきがへる。何を睨みてをるやしらず。我が欝屈を真似ゐる如し。 もぐら


8念入て、冬からつぼむ椿かな。

来年の入試問題作りゐる。幾らチェックをしてもミスあり。 もぐら
正解が二つ三つある問題に、かっ、と怒り出す人は落第。 もぐら


11捨鐘の間を降出す、くれの雪。

しんしんと去年の雪の降り残り、初陽はなくて初雪なりけり。 もぐら
二つ三つ鐘を寒夜に捨て去りて、熱気の中に除夜の鐘搗く。 もぐら


14冬の日をひそかにもれて、枇杷の花。

枇杷の花、啄む小鳥も寒げなり。今宵はかいまき重ねてぞ寝む。 もぐら
おろち、とうに寒さを逃げて土の下。その上、もみぢを焚きて酒呑む。 もぐら

正秀 [147]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2011年11月29日(火) 19時39分25秒 ]


蕉門下
正秀 水田氏 1657-1723

2腹這に眺むる、雪の朝日哉。

炬燵より足をし出さぬやうにして、今年の初日を拝みつるかな。 もぐら
侘びゐして炬燵に篭る我が身にも、差し入る初日はめでたかりけり。 もぐら


6猪に、吹かへさるるともしかな。

逃げ足は速かりしかども手負ひ猪、いづこの谷にて冬や越すべき。 もぐら
仔連れなり、撃たじ、とすれば、おのづから雪崩落ちきて道閉ざしけり。 もぐら


12帷子を洗はずにやる、名残かな。

急かぬ旅なれども、しばしは急くがごとき振りして到着時間など聞く。 もぐら
旅とふはかならず急ぐもの、とふは人類古来の迷信なるべし。 もぐら


13鴬のこゑに出でたつ、砥ほり哉。

砥石山、朝早けれど、鶯はなほ早くしてしばしば鳴くなり。 もぐら
硯石堅く見ゆれど柔らかなるを掘り出づれば、名筆産まれむ、と思ふ。 もぐら


17刀さす供もつれたし、朝の春。

きのふ来し中間、けふはお向かひの旦那の供して浅草吉原。 もぐら
日雇ひの中間なれば、ねえ旦那、酒手、としつこくねだるなりけり。 もぐら


21あんどんをけして、引っ込むよ寒哉。

行灯は消さず寝にけり。LEDよりも僅かのエネルギーなれば。 もぐら
LED、エネルギー消費少なけれど、色青くして寒げなりけり。 もぐら


29鹿熊のわれも仲間よ、雪の道。

足跡を追ひつつはた、と気づきけり。これはし凶暴熊どののか、と。 もぐら
鉄砲を持ちゐるなれば、我もまた猛獣なり、と密林に入る。 もぐら


32涼しさや、風まつ船の帆ごしらへ。

するすると帆は上がり行き、万風を孕みて船を北へと遣るなり。 もぐら
低気圧、予報より強くありにけり。本船、病後の我には辛し。 もぐら


34蔵焼けて、さはるものなき月見哉。

味噌樽の焼け具合良し、と痩せ我慢すれども、火事場の見舞嬉しも。 もぐら
味噌樽に火災保険は掛けざれば、お惣菜として売りひと儲けせむ。 もぐら


36とり散す遊び道具や、秋の風。

両隣、お子たち遊び疲れしや、拙宅門前遊具の山なり。 もぐら
お向かひの姉妹我が家にいりびたり、ままごとついでに飯炊きくるる。 もぐら

千那 [146]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2011年11月23日(水) 21時43分14秒 ]


蕉門下
千那 三上氏 1651-1723

1初霞、余古の産みける三上哉。

三上山、百度捲きゐしおろち殿、春ゆゑ脱皮、唐土へ往にけり。 もぐら
おろち殿の隠れがなりけむ余呉のうみ、冬の日なればただ光るのみ。 もぐら


4つれづれと白日、蝶の羽風かな。

てふてふの舞ふやみ寺のさくらの樹、ありにしことを思ふがごとくに。 もぐら
ゐしてふのけふはし見えず。春雨の中に立ちます野の仏かな。 もぐら


8いつ迄か、雪にまぶれて鳴く千鳥。

時雨して晴れにしけふの港なれば、千鳥もしばしちちと鳴くなり。 もぐら
春の海何処と知らぬ浜なれど、千鳥は来む、と知り、騒ぐなり。 もぐら


12高灯篭、ひるは物うき柱かな。

点す灯に、そこはかとなき物思ひ寄せつつ、秋は更けにけるかな。 もぐら
灯籠のなゐゆゑ倒れけるを惜しみ、さりとて老いは復す能はず。 もぐら


14常斎にはづれて、けふは花の鳥。

何につけ、かににつけつつ腹の減る、秋とふものは物憂かりけり。 もぐら
み仏は、腹へりてこそ悟るなれ。凡俗我は、四度飯を喰ふ。 もぐら


17紙屑や、出がはり跡の物淋し。

喧嘩して飛び出しにける会社ゆゑ、忘れ物取りに戻るは恥づかし。 もぐら
少々の退職金など受け取りて、地獄会社と縁切りにけり。 もぐら


20はつ雪や、横川の杉の三分一。

やうやうに雪つもり来て、善男も善女も寄らぬ鞍馬山かな。 もぐら
僧正も仏の道に入りにしか、峯には五尺の雪積るなり。 もぐら


24月に雁、前は小海老の堅田かな。

此処は何処、と目覚めて知れる月の影、広き水面に浮かびゐるなり。 もぐら
きのふまで京にゐし身と思へども、月ともどもの旅にてありけり。 もぐら

尚白 [145]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2011年11月23日(水) 21時42分14秒 ]


蕉門下
尚白 江左氏 1650-1722

3鴬や、雑煮過たる里つづき。

鴬もやうやく雑煮は飽きしならむ。ほかの餌を、と求め鳴き出づ。 もぐら
鶯も我また雑煮に飽きしなり。明日より鶯餅を喰はなむ。 もぐら


6春の日の、念仏ゆるき野寺哉。

み仏もゆるキャラとなりて招き給ふ、春の奈良へとまたも行きたし。 もぐら
野の寺のれんげ花咲く春なれば、甘茶も苦茶もめでたかりけり。 もぐら


7雉の尾に春風ゆらぐ、日影哉。

迷ひ雉らしきが雑木の蔭にゐて、冬には遠き山の里かな。 もぐら
あはれ、とふほどにはあはれのまさらねど、雉ともにゐる山のゆふぐれ。 もぐら


11ゆふ立や、田中の寺の瓜の花。

雨宿りせむとて入りし本堂の弥勒様へと、信じ入りけり。 もぐら
尼どのの水をやりたきかほ見つつ、ひでりの夏は果てにけるかな。 もぐら


16朝がほの花に非時まつ、小僧哉。

腹減りてひたすら腹減る非時なれば、み仏が斎すこしくすねむ。 もぐら
腹減るは、前世の業にてあるべし、と、修行のたらぬ我が身恥ぢたり。 もぐら



21一夜きて三井寺うたへ、初しぐれ。

お寺には桜ひともとありにけり。衆生我らに笑み給ふなり。 もぐら
来て往にて冬待つ近江の通り雨。三井の寺にて果てにけるかな。 もぐら


29乳のみ子に世を渡したる、師走哉。

うつし身の我、うつし身の子をなして、明日とふ世へと命渡すかな。 もぐら
ただひとり我が身なりしを恨みにて、師走の月はし寒くありけり。 もぐら


32ふりかねてこよひになりぬ、月の雨。

月待つを知らぬ顔にて時雨する、こころを知らぬけふの空かな。 もぐら
月如何に、花なほ如何に、と願ひつつ、現し身ひとつ歳取りにけり。 もぐら


35野の梅のちりしほ寒き二月哉。

なほ雪の融くる由無き山里の白梅、なほも散らであらまし。 もぐら
誰植ゑし、などとはとふに忘られて、春咲く定めの山里の梅。 もぐら


41さむしろや、衣うつ賎の膝がしら。

寒ければ、重ねし衾の隙さへも、ひた白霜の置きにけるかな。 もぐら
寒し、とふ口実ひとつつぶやきて、今宵は衣打つ砧止めたり。 もぐら







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